映画「コーダ あいのうた」耳の聞こえない家族に歌声は届くのか。5回泣いた

映画
Happy interracial family with laptop eating chips at home

人にはそれぞれにツボがありますよね。押されたらめっちゃ痛い足のツボ。逆に押すと気持ち良いツボ。他には笑いのツボや感動のツボ。この映画は私の感動のツボ(泣きのツボとも言う)をこれでもかと刺激してくる映画でした。自分でもよくわからないのですが、チアリーディングの女子高生が踊っている姿を見ただけで感動して泣いてしまいくらいです。(最近他人を載せた車の中でテレビからチアリーディングの映像が流れて来て私は涙をこらえるのに必死でした。)

さて、映画のタイトルにある「コーダ」というのは、(CODAChildren oDeaf Adults)で、聞こえない、聞こえにくい親を持つ子供の事をさします。

コーダは幼児期から親の通訳や複雑で感情的な代理交渉を行うことから、普通の子供たちに比べて心理的負担が大きい傾向が見られるようです。また親への差別や偏見に出くわすことも多いのだとか。

物語は17歳のJKが主人公で彼女以外耳が聞こえないという家族で育ちます。彼女は歌うことが大好き。でも家族はその事実を知らない。彼女の歌を聞いたことがないのだから。

2021年公開 監督シアン・ヘダー アカデミー賞作品賞、脚色賞、助演男優賞3部門を受賞

大海原に浮かぶ一隻の古びた漁船。その上には明らかに漁師と思われる男が2人とその場に不釣り合いな体操選手のように白くて華奢な少女が一人。男たちは手際よく作業をしている。少女は綺麗なよく通る声で小粋に歌いながらこれまた手慣れた様子で作業をしている。

港に戻り少女は海の男たちとなにやら魚の値段交渉をしている。その結果を船の男2人に伝えている。手話で。船の男は耳が聞こえないようだ。船の男は少女の父と兄。家族だ。

アメリカのハイスクールはみんな私服。筆者の高校はきっちり襟爪、応援団が着るような学ランだった。主人公のルビーは陰で同級生のJKに「魚臭くな~~~い」とか言われている。アメリカのハイスクールのいじめだ。そんな彼女の視線の先には一人の男子がいた。センター分けのさわやかで真面目そうな男子。

主人公はシャイな女の子。

初めての合唱部、ぞろぞろと生徒が音楽室に入って来る。音楽の先生が早く揃うようにと生徒を急かす。イタリア人のような風貌。マフラーを首に巻きコーヒーカップを手にして、指を鳴らしている。今朝ラテを頼んだらナッツミルクを入れられたから機嫌が悪いのだそうだ。なかなかにクセが強い。思い返せば音楽の先生はみんな感情豊かだった。ヴェルナルド先生。通称V先生。その人だ。日本でいうところの竹中直人や佐藤二郎のような役どころか。あそこまでふざけてはいないが。

自分の学生の時もピアノの前で生徒が並ばせられて歌ったなぁ。エーデルワイスとか。表情豊かに気持ちよさそうに歌っているクラスメートが2人ほどいたなぁ。なつかしい。私は恥ずかしくてみんなの前で歌えなかったなぁ。

主人公ルビーは逃げ出してしまう。恥ずかしくて声がでないから。

一人V先生のところへ謝罪しにいく。V先生はその時瞑想をしていた。
「合唱部を選んだのに人前で歌うのが怖いのか?」
「他の子の目が気になって。前にからかわれたから。小学校に上がった時に話し方が変で。」
V先生はルビーがコーダであることを知る。つまり彼女の家族はみんな耳が聞こえないということを。

再び生徒たちの前で歌う機会がやって来たがやっぱり声が出ない。そこでV先生の登場だ。ユニークなテクニックを使って彼女をのせる。大型犬と小型犬の呼吸法を彼女に伝授する。

「ハッ、ハッ、ハッ、プッシュ、プッシュ、プッシュ、中型犬、大型、、、、恥ずかしいのか!もっと押し出せ、プッシュ、プッシュ、プッシュ・・・・そのままーーー!歌えーーー!」

のせられたルビーが歌う。綺麗な大きな声で。生徒が顔を見合わせる。
「ワォ・・・」

あまりにもベタな演出だ。見ていてとても恥ずかしくなる。しかし私の「泣きのツボ」がその時強く押された。1回目のプッシュだった。泣いた。
私はこの映画が終わるまでにあと四回ツボをプッシュされることになる。より強く。

彼女は夢を追いかける。
しかし現実の壁が彼女の前に次々とたちはだかる。
彼女は恋をする。ウブな女の子の甘酸っぱい恋だ。
彼女は家族と頻繁にぶつかる。
夢を追いかければ追いかけるほどうまく行かない家族関係。

これは感動の要素しかない!

笑いあり涙ありの王道中の王道の映画。
だけどしばらくなかったストレートな映画。
愛を描いた心温まる感動の映画。
それがこの映画。

彼女の歌声は耳の聞こえない家族に届くのか。
彼女の夢は叶うのか。
彼女の恋の行方は。


最後の方に5回目のプッシュがありました。それはそれは強烈なプッシュでした。
ツボの芯のそのまた芯をピンポイントで押されました。
号泣しましたよ。めっちゃくちゃあたたかい。見ていて優しい気分になれます。

笑いたい時、泣きたい時、前に進みたい時に何も考えずに気軽な気持ちで見られる映画です。ポップコーンとコーラを準備して見たらいいと思います。ただ家族みんなで見ることはあまりお勧めしません。それはこの家族(ルビー以外)がセックスに開放的過ぎるんです。エロ爺の父親を中心にして。家族と見るとちょっと気まずい気持ちになることでしょう。それでも家族の愛が見事に描かれた良い映画であることは間違いないでしょう。

映画のシーンでルビーが車の窓から体を乗り出して家族に向かってポーズをとるシーンがあります。
それがこれ

このポーズどこかで見たことありませんか?
楳図かずおの漫画に出てくる坊ちゃん刈りの少年がやってるやつに似てませんか?

「グワシッ」ってやつ

これはどういう意味なんだろうと調べたところ。アメリカの手話で「I love you」つまり、愛してるとか大好きって意味だということがわかりました。

まさかこんなところで楳図かずおとアカデミー賞受賞映画がつながるとは。
楳図かずおは愛を伝えたかったんですね。(知らんけど)

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