映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」
2021年公開、監督・脚本堀江貴大 主演黒木華、柄本佑
まずこのタイトルがいい。映画のジャンルがホラーなのかコメディーなのかあるいはロマンポルノなのか。それによってまるで印象が違って聞こえるタイトル。
「先生、私の隣に座っていただけませんか?」
ジャンル分けが難しい映画
これはホラーなのかコメディーなのかロマンポルノなのか?
かわいいのか?怖いのか?
ハッピーエンドなのか?バッドエンドなのか?
いろいろとわからない。というよりかは見る人によって見え方が変わって来る面白い映画だと思った。
映画の筋は漫画家夫婦の不倫劇を描いた作品なのだが、当事者の本意がわからないのだ。何が本当で何が虚構なのかがわからないように漫画と現実がうまい具合に交差している。
黒木華の演技には色気がある
腹の内を決して明かさない、何を考えているのかわからない女性は恐ろしくもあり魅了的でもある。
不倫されている漫画家の黒木華は終始何を考えているかわからない見事な演技をしている。
「ねぇ、なんか怒ってる?」
不倫している夫がそう尋ねる。何を考えているのかわからないから怖くてたまらない。僕はこの夫にすごく感情移入させられる。
何を考えているのかわからない黒木華が牛乳パックに口をつけて飲むシーンがある。
もう怖くてたまらない。
すっとぼけたような不思議ちゃんの雰囲気を出しながら胸の奥に秘めた鋭い怒りをちらつかせる黒木華の演技。彼女の演技から女性の怖さとともに官能的な色気を僕は感じた。
ラストはそう来るか。女性はやっぱり恐ろしい。
最後の最後まで黒木華が何を考えているのかわからなかった。こんな女性がずっとそばにいられたらもうたまらない。でも私はこんな女性が大好きだ。男ってそういうところあるよね。感情を振り回されることに対する興奮。女性もあるのか。
この映画は見る人によって受ける印象がまるで違うだろうなと思った。漫画の虚構の世界と現実世界をうまく織り交ぜることで見る者に想像する自由を与えてくれる。だからいろんな見方ができて面白い。
ラストは衝撃的だった。
不思議ちゃんぽい漫画家主人公がめちゃくちゃ芯の強い女だった。
怖い。でも惹かれる。
最後に種明かしされる女の正体。
終始翻弄される柄本佑も最高によかった。
この映画はコメディーでもありホラーでもあるトレンディな映画だ。
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