好きな映画のジャンルはと聞かれたときに「時代劇」という人は少ないんじゃないかと思うのですがどうでしょうか? 少なくとも自分のまわりで時代ものが一番に出てくる人はいません。
人気がないのかレンタルショップのコーナーでもシリーズものは別として単体作品として置かれている本数は少ないような気がします。だからこそ良い映画があっても時代物はスルーなんて現象が起こりやすいんじゃないでしょうか。
面白い映画を見たいけど、どれを見ればいいかと迷った時に時代劇映画の中で見たことがない面白い作品に出会えるかも知れません。
というわけで、個人的に面白いと思った時代劇映画を紹介していきたいと思います。
清須会議
2013年公開 監督:三谷幸喜 出演:役所広司、大泉洋、小日向文世、中谷美紀、鈴木京香
清須会議:安土桃山時代の天正10年(1582年)に尾張の国(現在の愛知県にあたる)清須城にて実際に開催された。その内容と本能寺の変で命を落とした織田信長の跡継ぎと領地の分配をどうするかというもの。
天下統一を果たした織田信長亡きあとに繰り広げられる権力争いってこの部分だけとってもワクワクしますね。実際にその会議は4人の織田信長に仕えた武将によって行われました。
その4人とは、柴田勝家(役所広司)、羽柴秀吉(大泉洋)、丹羽長秀(小日向文世)、池田恒興(佐藤浩市)。もう面白い。
歴史が動く重要な会議。この4人を含む戦国の世に生きた人間たちのそれぞれの思惑が交差し繰り広げられる心理戦がコミカルに描かれます。コミカルとは言えところどころ見せる演者たちの迫真の演技がとても心地よく見るものを飽きさせません。
パッケージからもわかるようにキャストは超豪華な顔ぶれです。
個人的にキラキラした俳優陣多く出ている映画には少し抵抗があります。(なんでだろう)
だけど主人公である役所広司演じる柴田勝家がなんとも無様で哀れなんです。それがこの映画に重みを与えています。この会議を制したのは史実からもわかるように誰かは推測できるでしょうが、実は陰で糸を操っていた人物がいてその正体に驚きます。
ここからは余談ですが、この清須会議のあと会議の結果を不服とした人物が戦を始めます。それが現在の滋賀県で行われた賤ヶ岳(しずがたけ)の戦いです。豊臣秀吉と柴田勝家の戦い。この時柴田勝家の配下には前田利家がいました。前田利家は私が住んでいる石川県加賀藩初代当主なので私の推しです。映画では前田利家を浅野忠信が演じていて忠義に厚い武将として格好良く描かれているのが嬉しかったです。歴史って知れば知るほど面白いですね。
子供から大人まで楽しめる映画だと思います。
雨月物語
1953年公開 監督:溝口健司 主演:森雅之、京マチ子 第13回ヴェネチア映画祭銀獅子賞受賞
映画の原作は江戸時代後期上田秋成によって書かれた怪異小説「雨月物語」です。
江戸時代の怪異譚ってだけで興味がそそられませんか?
舞台は先に紹介した清須会議の後、柴田勝家がその決議を不服として羽柴秀吉に攻め込んだ賤ヶ岳(しずがたけ)の戦いの頃。
血で血を洗う戦国時代、その時代のリアルな日常というのは私たちの想像をはるかに超えるような壮絶なものだったことでしょう。さまざまな怨念が人々を苦しめ、魑魅魍魎が街にはびこっていた時代です。
主人公は瀬戸の焼き物で生計を立てる庶民です。その主人公が羽柴秀吉の占領下が賑わっていることをしり、戦に乗じて焼き物で一儲けしようと企てるところから始まります。その男が幽霊に取りつかれ狂っていく話です。
この物語に登場する幽霊は四谷怪談や牡丹灯篭といった見る人に恐怖を与えるものではありません。それどころかとても儚く美しい見る者の心を奪うような幽霊です。そしてどこか切ない。
白黒映画ではありますがその映像の美しさは見事で幽玄な妖しい世界観が素晴らしい。
また夫を支える妻(田中絹代)の姿がたまらなく愛おしい。
世界的にも評価が高い名作です。
この映画のオープニングで日本の伝統芸能である能の音楽が流れるのですが、なるほどこの映画の世界観は能に大きく通じるものがあると感じました。私はこれまで能にはまるで関心がなくどちらかというと退屈なイメージがあったのですが、この映画を見てからそのイメージは一変しました。
あなたの新しい扉を開くかもしれない今から70年以上前の名作
「雨月物語」
絶対おすすめです。
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たそがれ清兵衛
2002年公開 監督:山田洋二 主演:真田広之、宮沢りえ、田中泯
舞台は幕末庄内地方。庄内地方は山形県にあたる。
真田広之演じる貧しい下級武士である井口清兵衛が主人公である。タイトルにある「たそがれ清兵衛」とは藩の職務が終わると同僚たちの酒の誘いなどは一切断り「たそがれ時」にはさっさと家に帰るところから同僚たちが皮肉をこめてつけたところから来ている。
出世を望まず、同僚たちから何を言われようと自分の生き方を曲げないその姿は日本刀のようなかっこよさがある。そして山田監督がこだわり抜いたといわれる舞台設定は見事。貧しい下級武士の服装や髷(まげ)など画面を通して臭いが伝わってくるような演出。その他家屋、照明の明るさなどが本当にリアルで幕末の生活をうまく表現していて見ていてなんの違和感もない。
そしてやっぱり「男はつらいよ 寅さん」の山田洋二監督だけあってハートフルな人間模様がたまらない。家族の愛やマドンナとの恋愛、そして友情ありでとても心が温まります。
私がこの映画で最も印象的だったのは、田中泯の演技です。映画のラストの方で真田広之と田中泯が対峙するシーンがあるのですが、この時の田中泯の演技がすごかった。他の映画に出てくる田中泯の演技は独特すぎて浮いているように感じていたのですが、本作の彼の演技は映画とは別の芸術作品のようでしたし、最後のシーンは演出が素晴らしく歴史に残るような名シーンだと個人的には思っています。
日本アカデミー賞12部門で最優秀賞をかっさらった本作。
とっても見ごたえがあり子供から大人まで楽しめる感動の映画です。
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里見八犬伝
子供の頃、ワクワクドキドキ興奮がとまらず鼻血が出そうになった映画!
1983年公開 監督:深作欣二 原作:曲亭馬琴「南総里見八犬伝」
出演:薬師丸ひろ子、真田広之、千葉真一、夏木マリ、岡田奈々、京本政樹
この映画は子供の頃しょっちゅうテレビの地上波放送で流れており、食い入るように見ていた思い出があります。魔界や妖怪が出て来る壮大な世界観やところどころ挟まれるお色気シーン、それから日本の時代劇でありながらアメリカのロックミュージックが流れるところなどこの一作には成長盛りの子供にとって十分すぎるくらいの魅力的な情報に溢れていました。この映画を見た後トラウマが少しトラウマが残ってしまった記憶もあります。それでもめちゃくちゃ面白かった。
そんな子供心を魅了した「里見八犬伝」を大人になってから見てみたらどう感じるのか。
結果、今見てもめちゃくちゃ面白かったです。
里見八犬伝の概要
江戸時代後期、曲亭馬琴によって書かれた「南総里見八犬伝」が原作。28年かけて完成され全98巻106冊にもなり日本を代表する長編伝奇小説です。
ストーリーは室町時代までさかのぼります。当時繁栄を極めていた蟇田領(ヒキタ)に1人の女が現れます。名前は玉梓(タマズサ)。彼女は妖艶な魅力で蟇田領主を誘惑し骨抜きにしてしまいます。それから蟇田領主は酒池肉林に溺れ暴虐の限りを尽くすことになってしまいました。悪政に苦しむ農民のために里見家が蟇田家と玉梓の討伐に立ち上がります。
見事討伐に成功した里見ですが、玉梓によって呪いをかけられてしまいます。呪いの力で衰退していく里見家。そして100年の時を超えて魔物として復活した玉梓。里見家の存続を託された最後の希望、静姫と彼女を守る八犬士。光と影の戦いが壮大なスケールで描かれる超大作です。
里見八犬伝の見どころ
日本では制作されなくなったワクワクドキドキSFファンタジー
里見八犬伝は映画サイトのレビューなどをみるとB級映画のように揶揄されることが多いですが、まるでハリウッド映画のインディージョーンズやグーニーズ、スターウォーズのようなスケールの大きさでかつ日本の素材を存分に使った名作だと思っています。こんなワクワクドキドキするSFファンタジー実写映画は長い事日本では制作されていないのではないでしょうか。
内容がわからなくても面白い
江戸時代の古典小説が原作ですから少し内容が分かりにくい所もあるのですが、そんなことはどうでもいいくらいに面白い。内容はわからなくてもわかりやすく「光の軍団」と「影の軍団」の対立構造があり。光の菩薩や光の弓矢が出てくる一方で巨大ムカデ、大蛇、血の池、妖怪婆が出て来てる。そんなわかりやすい構成と刺激的な描写が子供の心を鷲掴みにします。何十年かぶりに妖怪婆を見た時にその姿がしばらくトラウマになっていたことを思い出し笑ってしまいました。
今見るとその手作り感がとても新鮮
1983年の映画ですからCGなどなくすべて手作り。40年間の映画技術の進歩を垣間見ることが出来ます。多少違和感があるところは否めないのですが、それを補って余りあるくらいの演出のすばらしさを感じました。
「仁義なき戦い」、「鎌田行進曲」、「火宅の人」、「バトルロワイアル」と数々のヒット作を生み出してきた深作欣二監督ならではの見る者の心を刺激する演出はやはりすごいと思います。
夏木マリは本当に魔物なのではないか
何十年振りにこの映画を見て衝撃を受けたのは夏木マリの変わらなさ。
40年前と今で全然変わらない夏木マリにドン引きすること間違いなし。
この映画を演じていた時の夏木マリは31歳です。
まさに魔物です。
そんな見どころ満載の映画「里見八犬伝」は子供も大人も楽しめる名作です。
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