朝６時、ゴミ出しの時に少し大きめの昆虫らしきものが、突然顔を出した。そいつは音もたてず飛んでおり何かはわからなかったが、心が鬼の速度で恐怖を感じ、アパート共有のゴミ箱の取っ手を手から放してしまった。そのゴミ箱は鉄製でなかなか重量があるため、取っ手から手を離したことでゴミ箱の鉄製の蓋は重力に従い高いところから落下するようにして閉まった。その時にかなり大きめの音を立ててしまい、近所の気持ち良く寝ていた人を起こして閉まったんじゃないだろうかと思った。
人が虫を恐れるのは不思議だ。スズメバチやムカデなど人体に影響を与えるものならばまだ理解ができるが人が恐れるのはそういうものばかりではない。
ゴキブリや毛虫そして蛾等は恐れられる代表格だ。彼らは彼らで与えられた生を純粋に全うしているだけだ。健気に生きる小さきものだ。恐れる必要はない。愛せよ。
私は昆虫系YOUTUBERの動画が見たくなった。その映像の中では陽気な男が蛾を捕まえて愛でている。
「かわいいですね～」
心なしか捕まえられたその蛾たちも嫌がりながらではあるがどこか嬉しそうだ。自分と同じ人間が蛾と戯れている。
「モフモフしてて、かわいいですね～」
しばらく見ていると心の抵抗がなくなって来る。
「かわいいですね～」
あれ、ほんとだ。よく見ると蛾の本体の方はハムスターみたいでモフモフしてる。目もなかなか愛嬌があって可愛い。
私は重度の蛾嫌いだった。（その他の虫はまったく大丈夫なのに）夏が来るのが憂鬱になるくらいの恐怖症だった。蛾で泣いたこともあるし、血の気が引いて失神してしまいそうになったこともある。蛾の存在を確認したら半径５０メートル内は危険ゾーンになる。このままではいけない。蛾を退治することもできない。いなくなってくれればいいのだがそういうわけにもいかない。なんとか克服しようといろいろ試した。最初は写真はおろか絵を見ることも大きな抵抗を生じるくらいだった。しかし今は動画を見て楽しめるまでになった。継続して自分の気に入った動画を見ていると実際に実物を見てもあまり動揺しなくなっている自分に気づく。
昆虫系ユーチューバーさんありがとう。いろいろ試した中で彼らの動画をみることが自分にとっては最善の克服法であるようだ。
最近見ていなかったから、自分の中でアレルギーが再発しているようだ。これからちょくちょく彼らの動画をのぞいてみよう。楽しめる範囲で。
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