私たちは普段日常生活を送る中で知らず知らずのうちに不平不満を感じる場面が出てくるだろう。
子供であればおかあさんが自分をわかってくれない。学校でいじめにあっている。
働く人であれば上司とうまくやれない。給料が安い。職場の人間関係がだるい。
主婦であれば旦那をどうにかしてほしい。子供がまったく言うこと聞かない。
とか。
しかし明日もし突然戦争が始まったらどうでしょう。
昼間から銃声が轟くいつもの町。近所の佐藤さんのお宅に砲弾が飛び込んだようだ。
イオンが兵隊によって占拠された。その隣のセブンイレブンも。兵隊たちが下卑た笑いを浮かべながらガリガリ君ソーダー味を齧っている。水道、ガス、電気が止まる。食べ物もない。それから想像を絶する暴力の世界が繰り広げられていく。
現在身の回りに起こる問題はとても些細で取るに足らないことのように感じられます。それどころか戦争の中であのころはなんと幸せだったのだろうと泣きながら今あるこの現実を羨望のまなざしで見つめることでしょう。
我が国では実際に戦争を体験したことがない人がほとんどだと思いますが、だからこそ戦争映画を通して平和のありがたさやその他学べる事は多いと思います。
そこで今回は魂を揺さぶる感動の戦争映画を紹介していきたいと思います。
戦場のピアニスト
2002年公開 ロマンポランスキー監督 カンヌ映画祭で金賞(パルムドール)受賞
第二次世界大戦のドイツと言えばナチ党のヒットラーですね。ヒットラーと言えばユダヤ人大虐殺を企て実行した極悪人というイメージがあるかと思います。国の命令に従い虐殺を行っていったドイツ兵たち。今の平和な日本にいると、戦争という異常性をリアルに想像することは難しく、なぜ人間がここまで残酷になれるのだろうかとこの映画を見て考えさせられました。
作中では善良なユダヤ人にたいして極悪非道なドイツ人の生々しい暴力的描写が多く登場します。そんな中ドイツ兵の指揮官でありながらユダヤ人を助ける男が現れます。この映画は主人公のピアニストが実際に体験し記した著書「ある都市の死」を元に作られました。
本作最大の見どころは「ピアノの旋律」
冬の夜に月あかりが優しく差し込む廃墟の部屋で主人公はショパンのバラードを演奏します。もうこのシーンは「美しい」の一言。ドイツ兵とユダヤ人がピアノを挟み向かいあい生ずる緊張感もこの演奏のまえでは、美しさに変化します。この時だけは戦争が姿を消し世界が静寂に包まれます。冷徹なドイツ兵の表情が和らぎほのかに笑みが見られます。
この映画には刺激的な音楽や過度な脚色がありません。大きな感動やハラハラドキドキといったスリルもありません。時折流れるクラシック音楽を背景に淡々と物語が進んで行きます。映画そのものが一つのクラシック音楽のように流れて行きます。戦争の醜さと月の光の下で流れる美しい旋律。この絶妙なコントラストが実に見事である。
歴史に残る名作です。
シンドラーのリスト
1993年公開 監督スティーブンスピルバーグ アカデミー賞で7部門受賞 主人公リーアムニーソン
ナチスの犠牲になったのは、ユダヤ人だけではなくドイツ人も例外ではないだろう。極悪非道の超ブラック企業の中にも心優しい人はいる。暴力の世界に生きる中で自分の信念を貫き通すことはなかなかできることではない。上司の命令に逆らってでも自分を貫きとおす人間が今この日本にどのくらいの割合でいるだろうか。
戦場のピアニストと同様ドイツ人がユダヤ人を救う感動の映画です。
実在したドイツ人のオスカーシンドラーが主人公です。
シンドラーは悲惨な戦争中に奪われるはずだった約1100人の命を救います。
私はこの映画を見終わった後しばらく動けなくなりました。衝撃的で生々しいシーンがそうさせたのかもしれない。それとも胸を打つ深い感動がそうさせたのかもしれない。
絶望という深い暗闇の中に射す一筋の光。その光が1100人の失われていたはずの命を救ったのです。1993年公開当時の「シンドラーのユダヤ人」の子孫は6000人以上を数えます。2023年現在でその数はどうなっているのでしょうか。10年後100年後はどうなっているのでしょうか。救われた命だけではない。彼の行動は人々の心に光を植え付けたのではないでしょうか。
私は生きていて何が正しく何が間違っているのか時々わからなくなることがあります。しかしシンドラーの行動は全き善であり、純粋な光と言えるのではないでしょうか。その光はこれからも益々拡大しいつまでも輝き続けることでしょう。
シンドラーの愛と勇気にはただただ敬意しかない。
この映画を通して戦争の歴史的事実を知れたことにも意味があるし、作品としての完成度もとても高い。途中冷酷なナチスの幹部の心が揺れるシーンがあります。同じ人間でありながら命を奪いあうことの不条理。戦争や善悪というものについていろいろ考えさせられました。
私はこの映画に出会えて良かったと心から思えます。
プライベートライアン
1998年アメリカ映画 監督:スティーブンスピルバーグ 主演:トムハンクス、マッドデイモン
極限の状態でも自分を保つことができたのはなぜなのか?
シンドラーのリストに続きスティーブンスピルバーグ監督が第2次世界大戦をテーマにした第4作目の作品。
この映画の見どころは戦争という地獄の中でほのかに光る人間の美しさです。
本作は多くの人が語るように冒頭の約30分、悲惨極まりない描写が続きます。
実際にあった第2次世界大戦のオマハビーチへの上陸作戦が再現されています。
前方の丘には敵が待ち構えており無数の銃弾が飛んできます。そして兵士たちが次々撃たれ倒れていく。血や肉片さらにはこぼれ落ちる臓物が非常にリアルに映し出されています。
絶対こんなところに行きたくない。まさに地獄のような絶望の世界を冒頭の30分見続けなければなりません。
これまで私が見た映画の中で最も実戦をリアルに描いた作品なのではないかと思います。とても説得力がある映像で、実際の戦争ってこういう感じなんだろうなと納得させられます。とにかく悲惨です。
そんな絶望の中で戦わなければならない。無数の銃弾が降ってきて仲間たちが次々と命を落としていく中で、自分をその中に飛び込まなければならない時に一体どういう心境なんだろうか。正常な精神を保つことが出来るんだろうか。と最初の30分のシーンで否応なしに戦争の世界に引きずり込まれます。
そして主人公のトムハンクスが良いんです。その演技、役どころ。特別目立つ存在ではないのです。だけどすごく良いんです。あまり多くを語らない指揮官を演じています。戦争映画に出てくる指揮官と言えばとにかく圧がすごいイメージですが、トムハンクスは違います。無駄にやかましいところはありません。数ある戦争映画の中で珍しいタイプの指揮官だと思います。それでも難しい作戦を成功させていく有能な指揮官です。そしてクセが強い荒くれ者の兵士たちも初めのうちは反発をしていますが最終的にはトムハンクス演じるミラー大尉の人間味に惹かれていきます。
極限状態でも我を忘れなかった兵士たちがいる。
その理由にとても心があつくなり勇気づけられる映画です。
アメリカンスナイパー
2014年公開 監督:クリントイーストウッド 主演:ブラッドリークーパー、シエナミラー
戦争映画で史上最高の興行収入を記録した映画
壊れていく兵士たちの心が鮮明に描かれている
本作はアメリカで伝説の狙撃手(スナイパー)と謳われているクリス・カイル実在の人物にスポットを当てた戦争映画である。
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件を受けてまもなくイラク戦争が始まった。主人公のクリスは名狙撃手として、テロ組織リーダーザルカウィの捜索作戦にチームに入る。
この映画はクリスが伝説のスナイパーとしてアメリカの英雄になるまでに、クリスの心がゆっくりとであるが着実に壊れていく様子が鮮明に描かれている。壊れるに至るだけの十分な説明が映像を通して展開されていく。
この映画は心して見なければならない。
プライベートライアンの冒頭30分の生々しい戦闘シーンは有名であるが、この映画にはそれとは異質でもっと心の奥深くをえぐるような痛みを見る者に与える。
イスラムテロ組織武装勢力のどこまででも追いかけてくるような不気味な恐怖、無機質な砂漠地帯、仲間たちの死、そして壊れていく兵士たちの心にあなたの心も持っていかれないように。
この映画に救いはない。
だがしかし人生で一度は見る価値がある映画である。
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善き人のためのソナタ
あの江頭2:50分も大絶賛した東西冷戦下の監視社会の真実を実話をもとに描いた傑作!
2006年公開ドイツ映画 監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック
第79回アカデミー賞外国語映画賞受賞
本作は砲弾が飛び交う過激な内容のいわゆる戦争映画ではないのですが、第2次世界大戦後の緊迫する社会背景のもと絶大な権力に虐げられる人々を描いた映画です。鑑賞するにあたり当時の時代背景を知っておいた方が入り込みやすいと思いますので以下にそれを記します。
時代背景
舞台は第2次世界大戦後の冷戦下。世界はアメリカを筆頭とする西側諸国(資本主義・自由主義陣営)とソビエト連邦を筆頭とする東側諸国(共産主義・社会主義陣営)の対立構造にありました。
敗戦国であるドイツは領土を戦勝国4か国(アメリカ・フランス・イギリス・ソビエト)の共同管理地域とされ、東ドイツはソ連からの大きな経済援助と軍事力で社会主義国として東側陣営に属していました。ドイツは東西で完全に分断され東ドイツの人々は大量に西ドイツに流れて行きました。それを危機とした政府がドイツの首都であり東西を分けるベルリンに壁を設けます。これが冷戦を象徴する有名なベルリンの壁です。
本作はこのベルリンの壁が崩壊する以前の東ドイツの実情を描いています。
見どころ
東西冷戦の緊張状態のなか異端分子を徹底的に排除しようとする東ドイツは自国民を監視します。
主人公は国家保安省のベテラン拷問官の男。権力側の人間です。まったく感情を表に出さない主人公は尋問を相手を執拗なまでに追い詰める姿はまさに冷酷そのもの鉄の心の持ち主です。
その冷酷な尋問官が芸術家の監視を続ける中で監視対象に感情移入してしまいます。多くを語らない主人公の心の変化がとにかく上手く映し出されているんです。監視社会の中で主人公や市民がそれぞれに信じる正義を求めて生きることがどんなものであるのかを私たちはこの映画で知ることが出来ます。
冷酷な人間が葛藤しながら血が通っていく姿を是非見ていただきたいと思います。
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