加賀百万石の礎を築いた前田利家とまつを御祭神とする金沢市の中心部に鎮座する尾山神社を以前紹介させていただきました。尾山神社は神門のステンドグラスがロマンチックで更に庭園が素晴らしいことで有名です。そんな金沢市と縁が深い尾山神社とは別に金沢を語る上で外すことが出来ないお寺があります。それが今回歩いてきました天徳院です。
天徳院は加賀藩2代藩主前田利常の正室である珠姫が眠る寺院として人々に愛されている寺院です。
金沢市の中心地から少し離れたところにありますので、観光名所として知名度はそれ程高くないかもしれません。しかし金沢をより深く堪能するうえでこの天徳院と尾山神社はおすすめのスポットです。
それでは天徳院とともに珠姫という人物についてご紹介していきたいと思います。
珠姫の寺「金龍山 天徳院」
天徳院は加賀藩3代目藩主前田利常の正室珠の菩提寺として、元和8年(1623年)に創建。
寺号は珠の法号に因む。当時4万坪の敷地を有し、後に500石を拝領した。
(*天徳院の案内より)
当時珠姫様のために東京ドーム約3個分の敷地で500石があてられた。
500石とはどのくらいか?
江戸時代1両のお金でほぼ1石のお米が買えたということなので500両。
1両=10万~20万(現在の価値に換算した場合)で間をとって15万。
よって500石=7500万円
つまり珠姫の没後、彼女のために東京ドームの約3個分の土地に年間7500万円が加賀藩からあてられた。
それが天徳院。
ということなのかな。
珠姫様とはどんな人?
*画像はイメージです。
~略歴~
生まれ:慶長4年(1599年)3月江戸幕府第二代将軍徳川秀忠公の次女として生まれる。
初代将軍徳川家康のお孫さん。
三代将軍徳川家光のお姉ちゃん。
婚 約:慶長5年(1600年)前田利常と結納を交わす。翌年江戸から金沢に入る。
この時の年齢はわずか3歳。
結婚出産:14歳で結婚しその後10年間の間に3男5女を出産。
永 眠:元和8年(1622年)享年24歳。
政略結婚 ~珠姫はお松の身代わりだった~
3歳で結納を済ませた珠姫。当然ながらそれは政略結婚。
彼女たちの生きる意味とは。今とは比較にならない「家の価値」とは。
ちょうど珠姫が生まれた慶長4年(1599年)初代前田家藩主利家が亡くなり、二代藩主利長が加賀の国へ戻り藩政を治めていた。その間には、前田が徳川を討つという噂が流れ、将軍家康は大変驚き軍勢を集めて前田を攻めようとした。この情勢を聞いた利長はすぐに国家老を派遣して、前田家が徳川幕府に刃向かう計画は一切無いことを説明、その証としてやむなく利長公の母、お松の方(芳春院)を人質として江戸に送り代わりに珠姫を嗣子利常の嫁として受けることを約束した。
この頃、豊臣秀吉が亡くなり激しい権力争いが繰り広げられている渦中の出来事。その翌年にあの有名な「天下分け目の戦い 関ヶ原の合戦」が勃発する。
そんな動乱の中に3歳という幼さで前田家に嫁いだ珠姫は加賀百万石を救った姫様として、また良妻賢母の女性の鑑として金沢市民に愛されている。
政略結婚ではあったが前田利常と珠姫の中はとてもよかったそうです。
24歳の若さで亡くなった珠姫の裏でうずまく黒い影
オシドリ夫婦だった利常と珠姫ですが、これを面白くないと思っていた人物がいました。珠姫の乳母です。
珠姫は5女の夏姫を出産した後、乳母は外様筆頭の前田氏に幕府の情報が漏れることを恐れて、利常が珠姫が会いに来ても母体の調子が悪いなどの理由をつけて追い返します。何も知らない珠姫は利常が会いに来てくれないのはもう自分に対する寵愛が解けてしまったのではないかと心を痛め食事も喉を通らず衰弱し病にかかって1622年にこの世を去ってしまいます。
珠姫の死に憔悴しきっていた前田利常は珠姫の遺書などによりこの事実を知り怒り心頭です。
珠姫の父である徳川秀忠に乳母の処刑の許可を取り付け、たくさんの蛇と酒の入った大きな桶へ裸にした乳母を入れ、乳母の体は蛇に食い荒らされ、最後は骨しか残らなかったとも言われています。
本当に昔はやることがすごいです。
天徳院内が独特です。
山門を抜けると本堂に続く長い通路があります。
右に行くと「羅漢の道」
左に行くと「菩薩の道」
係の女性による語りが面白い
院内では、珠姫様のゆかりの品(珠姫様が実際に乗った駕籠など)や当時の貴重な品々が数多く展示されています。
また多くの仏像が所蔵されており、独特の厳かな空気感があります。
さらに係員の方から珠姫様に関する大変興味深いお話を聞くことが出来ます。
江戸時代の昔話その語りは思いのほか感動的で楽しかったです。
意表を突かれたからくり人形劇
(*画像はイメージです。)
本堂の中、ふすまで仕切られた奥の室でからくり人形劇を観覧することができます。
演目はもちろん「珠姫と利常の涙のストーリー」で20分くらいの劇です。
お寺の中でからくり人形劇を見れるなんて思っても見なかったので驚きました。
初めて見るからくり人形劇は動きがとっても素朴で愛らしく刺激的でした。
からくり人形の動きに心が奪われて内容はあんまり入って来ませんでした。
さいごに
親切な女性の面白い語りあり
意表をつかれるからくり人形劇あり
そして院内の展示の品から幼い珠姫の生活ぶりや悲劇的な半生に思いを馳せ、感慨深い価値のあるひと時を過ごすことが出来ました。
ここ天徳院は金沢の中心地からやや距離がありますが、最近できた観光スポットと言える「石川県立美図書館」の近くにありますので図書館を訪れる際に寄って見られてもいいと思います。。
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