「愛したはずの夫は、まったくの別人でした。」
2022年公開 監督:石川慶 原作:平野敬一郎「ある男」
出演:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、柄本明、真木よう子など
第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか8部門で最優秀賞を獲得
あらすじ
田舎町に住むどこか影のある里枝((安藤サクラ)が過去に離婚調停手続きを依頼した弁護士城戸(妻夫木聡)に相談を持ち掛ける。その内容は「仕事中の不慮の事故で他界した再婚した大祐(窪田正孝)の名前がどうやら自分が知っているものと違うらしい。他界した夫は一体何者なのかその身元調査をしてほしい」というもの。
弁護士(妻夫木聡)は女(安藤サクラ)の亡夫(窪田正孝)の交友関係や過去を追っていく。
そして次々と明らかになる事実に弁護士(妻夫木聡)の心の闇が共鳴する。
見どころ
亡き夫、大祐には驚くべき秘密が隠されていた
妻里枝と子供を残して不慮の事故で命を落とした大祐には、驚くべき秘密がありました。その秘密が、物語の核心に迫ります。
弁護士城戸の人生
謎を残してこの世を去った大祐の身元調査に乗り出す弁護士の城戸。城戸は自分自身の人生についても深く考えるようになります。弁護士という肩書に綺麗な奥さんに可愛い子供を持つ絵に描いたように恵まれた生活を送る城戸ですが、物語が進むにつれて彼の心の闇が拡大していきます。
少しずつ少しずつ影を落としていく心。そしてその心の変化をとても繊細なタッチで描かれる演出に私たちは心を奪われてしまいます。
生まれながらに背負ってしまった業
親ガチャなんて言葉がはやりましたが、人間には自分ではどうすることも出来ない生まれながらの業があります。
弁護士の城戸は大祐の真実に近づくにつれ、己の内面にある自己否定的な部分が浮き彫りになり苦しむことになります。苦しみ苛立ち人を傷つけてしまう城戸ですが、真実を求めずにはいられません。
その真実に追いついたときに見える世界は果たして光か闇か・・・
窪田正孝の演技力
私は特別窪田正孝のファンというわけではないのですが、彼の演技とその存在感はすごいものがあるとこの映画で感じました。窪田正孝が演じるのは謎を残して他界した大祐とその父親。つまり一人2役。この2人の人物を中心に物語が展開していくといっても良いくらい重要な役割です。この2人を見事に演じた窪田正孝がこの映画に深みと説得力を与えているように私には見えました。
こんな自分はいやだ
これまでの人生を一切清算してまったく新しい自分をやり直したい
自分って一体なんなんだ
人間にとって本当に大切なものとは
人間の本質的テーマを
豪華な俳優陣の見事な演技に裏打ちされた巧みな演出で
見事に描く
心を揺さぶる名作です。
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